長年に及ぶパリダカ挑戦でマシントラブルによるリタイアを期したことがない、絶対的な耐久信頼性を誇る日野レンジャー。中型車ベースの車両で大型のモンスターカミオンと熾烈な戦いを繰り広げる日野レンジャーは、リトルモンスターの名称で恐れられている。
2012年大会に向け、8年振りとなる新型車を投入。ミッドシップ化や大幅な軽量化に成功した新型車両のメカニズムに迫る。
 
RANGER
 
競技車両主要仕様
車両名称日野レンジャー
エンジン
型式J08C-TI(ターボインタークーラー付き)
シリンダー直列6気筒
排気量7,961cc
最高出力450ps/2,800rpm
最大トルク138kgm/1,600rpm
トランスミッション6速ダイレクトドライブ 副変速機付き
トランスファー2速 Hiレンジ:1.000 Loレンジ:1.598
アクスルフルフローディング デフロック前後付 4.625
サスペンション前後マルチ式リーフスプリング
車両サイズ全長6,100mm/全幅2,390mm/全高3,100mm
ホイールベース3,750mm
タイヤサイズ14.00X20
車両総重量6,700kg

■エンジン
J08C型インタークーラーターボエンジンは最大回転数の高回転化、噴射ポンプ調整など規定に準じたファインチューニングが施されており、3,500回転近くまでストレスなく噴けあがる。扱いやすさに加え、その耐久信頼性は絶大で、パリダカで連続完走を続ける、文字通り「原動力」であることは間違いない。12年向け新型車両は搭載位置を300mm後方にずらしたミッドシップレイアウトを採用。大型タイヤとの組み合わせで最高速は170km/hに達する。
■サスペンション
道なき道で争われるパリダカではサスペンションのセッティングが勝負を左右するといっても過言ではない。操安性を保ちながら、砂丘や岩場、さらには高速時のギャップ通過などあらゆるシチュエーションをこなすセッティングが求められる。使用サスペンションは毎年、改良に改良を加えたホリキリ社製のマルチ式リーフサスペンションに各輪2本のライガー社製のショックアブソーバーを装備する。
■空気圧調整システム(CTIS)
走行中に車内からの操作でタイヤ空気圧の調整が行える装置。エアタンクから、エアシールで密閉されたハブベアリングを介して、空気圧を加減する。ラリー時は0.8から3.5キロ圧の範囲内でナビゲーターが絶えず調整する。右側の画像が加減圧を行うコントロールボックスだ。
■リアボディ
キャブと側面を合わせ空力にも配慮した設計のリアボディは坪井特殊車体で改良を重ね製作されたもの。12年向け新型車両は特殊な軽量幌を使用。改造車のレギュレーション変更にあわせ、構造物を簡素化し、大幅な軽量化に成功した。よってリアゲートや床は存在しない。荷台内にはスペアタイヤ2本と最低限のスペアパーツが積まれる。スペアパーツの選択や少量化も大事な作戦の一つだ。
■燃料タンク
車両両サイドに日本軽金属社製の燃料タンクが合計2つ積まれる。車両規則で800キロの無給油走行を義務づけられているため、総容量は600リッターに及ぶ。左右のサイドパネル内には工具やエアジャッキなどが格納され、パンクなどのトラブル時に即座に対応できる構造だ。
■インタークーラー
インタークーラーは従来のラジエター前からキャブバックに移設。キャブ上からの強烈な巻き込み風を利用することで、冷却効果が大幅に向上している。さらに同列にエンジン、トランスミッション、トランスファーのオイルクーラーも移設されている。
■コクピット
ワイド&ハイルーフ仕様のキャビンに組み込まれた70ミリ口径のロールゲージやレース用バケットシート、ナビゲーション機器類などがラリーカーの雰囲気をかもしだしている。バケットシートはFIAの規格品を、タチエス社で施工したクッション性の高いスペシャル品。長時間走行を強いられるパリダカでは、シートの選定も重要なポイントだ。また、フロントガラスには全面にセイコーステラ社製の特殊フィルムが貼られ、飛び石による破損防止や断熱、UVカットといった効果を発揮している。