競技の仕組み/リエゾンとスペシャルステージ

 
ダカールラリーは数週間に渡り、約1万キロの行程で争われる競技で、国境も越えれば、町中も通過するため、すべての行程で速さを競い合うわけにはいかない。この辺りのことが少々ややこしいので、順を追って説明しよう。まず、1日の行程はステージ(エタップともいう)という単位で区切られ、ステージで結ばれた各スタート&ゴールをビバークという。10年度を例にすると、スタートからゴールまでの日程が16日間で、中間地点での休息日と表彰式を除いた、14ステージで構成されており、全行程の走行距離8,955kmを14で割ると、1ステージあたり約640km移動することになる。これをわかりやすく日本の地名で例えるならば、第1ステージは東京をスタートし、大阪のビバークでゴール、翌日の第2ステージは大阪から博多のビバークへ向かう、といった具合になる。この繰り返しで最終ゴール地点を目指すのだ。

STAGE
OUARZAZATEからTAN-TANに至るステージで、線上の赤がSSで白がリエゾン
しかし、ダカールラリーではパリやブエノスアイレスといった大都市がスタート地点となることが多く、競技だからといっても町中を身勝手に走り抜けることはできない。そのためにリエゾンという移動区間が設定され、ステージはおおむね、このリエゾンとSS(スペシャルステージ:競技区間)によって形成される。先程の東京−大阪間を例にすると、この間に数百キロに及ぶSSを開設できる場所がないので、そのほとんどがリエゾンとなり、東京から長野までリエゾンで移動し、長野の特設コースで数十キロのSSを行い、長野から大阪までリエゾンで移動する、といったステージ構成となる。スタート、ゴール付近の大都市ではどうしてもこのような設定にならざるを得ず、長距離のリエゾン&数十キロのショートSSというのが一般的で、その他は連日200〜600km程度のSSが設定されるダカールラリーの場合、このように毎日がステージという単位で移動を続けていくため、トラブルなどで翌日のスタート時刻に間に合わない場合は、その時点で失格(リタイア)となる。


競技の仕組み/スタート順序とルートファインディング

ROAD BOOK
ロードブック。左側の数字が距離、真ん中が目標物と指示、右側がコメント欄
各ステージのスタートはまず二輪から1台もしくは2台づつ順に行われ、すべての二輪がスタートした後、30分のインターバルをおいて四輪/カミオンが順にスタートする。基本的にスタート順は前日のステージ成績の早い順に行われ、各部門の上位10台が2分間隔、その後は1分から30秒間隔でのスタートとなる。08年度の参加台数を例にすると、二輪が245台、四輪/カミオンが265台なので、二輪の上位20台で20分(2分X10列)+残り225台で57分(30秒X113列)+インターバル30分+同じく四輪/カミオンの合計143分で、合計すると4時間10分にもなってしまう。スタートだけでこれだけの時間がかかるわけで、四輪/カミオンの最終走者がスタートする頃には、二輪のトップライダーはすでに次のビバークに到着しているということも珍しくない。また、SSの道幅が狭い場合は、二輪と四輪/カミオンのルートが一部別となったり、カミオンはすべての四輪の後からスタートするなど、競技車同士の追い越しリスクを減らす対策がとられている。

人里離れた広大な大地で競技が行われるといっても、競技者は主催者によって定められた指定ルートを走らなくてはならない。このルートは参加者に渡されるロードブックに記されているが、ロードブックは毎日のゴール後に翌日分のみ配布されるため、事前の下見等は一切できない仕組みになっている。ロードブックには距離と目標物、危険箇所や方位等が簡略に記され、ナビゲーターはロードブックに記された情報とトリップメーターやGPSを駆使し、ルートを確認しながら、ドライバーに指示を送る。但し、GPSは主に競技車の軌跡や速度データーを記録するレコーダー的な役割を担っているにすぎないため、ほとんどの状況下で機能が制限されており、いわゆるカーナビ的な使い方は一切できない仕組みとなっている。
ルート上にはCP(チェックポイント)が数カ所設けられ、競技者はここでタイムカードに通過証明のスタンプを受ける。ステージ終了後、タイムカードに各CPのスタンプがない参加者は、CPの不通過とみなされペナルティが課せられるシステムだ。また、近年はCPに加え、1ステージ数十カ所のウェイポイント(WP)も設置され、GPSによってそのすべての通過が管理されている。
CPやWPの役割についてもう少し詳しく説明しよう。仮に東京−大阪間でSSが行われたとする。CPやWPがなければ東名高速を使い5、6時間で走りきることが可能だが、CPを金沢に設置し、その通過ポイントに数々のWPを設置したらどうだろう。もうおわかりだと思うが、CPやWPを設けることで、難易度の高い砂丘を越えさせてみたり、距離を稼いだりといった、主催者の思惑通りのルート作りが可能となるのだ。よって、故意にCPやWPを通過しない行為などは重大なペナルティを課せられることになる。


競技の仕組み/ペナルティとリザルト

CP
CP、WPの不通過は重大なペナルティ対象となる
ダカールラリーでは様々なペナルティが定められており、時間換算されたペナルティがSSの純粋なタイムに加算されたものがリザルト(成績)となる。単純な話、ペナルティさえ受けなければSSタイムの合計がリザルトに反映されるということ。一口にペナルティと言っても色々あり、時間換算されリザルトに加算されるものや、罰金、さらに深刻なペナルティの場合は失格となる。ここですべての項目を書き記すことはできないので、1日の流れに沿って説明していこう。まず、ステージのスタート指定時刻への遅刻の場合、1分につき1分のペナルティ。さらに30分以上遅れた場合は失格。ビバークを離れSSスタートまでのリエゾンにはターゲットタイムが定められており、遅れた際は1分につき1分のペナルティ。逆に早着の際は15分というペナルティが課せられる。しかし、ダカールラリーにおいてはSSスタート地点のすぐ近くで待機し、指定時刻にコントロールゾーンに侵入する形が常識化しているため、リエゾンで指定されたアベレージに沿って走行するといった概念はない。また、前項で述べたとおり、SS中はロードブックで指示されたルートから外れてはならず、大きく外れた場合は、それが例えルートを見失った場合でも失格審議の対象となる。CPやWPの不通過も2〜5時間のペナルティの対象で、場合によっては失格となる重要なポイントだ。さらにSSにはマキシマムタイムが設定されており、これを超えてもペナルティとなる。このように書き記していくときりがないが、ダカールラリーで良いリザルトを残すには、ペナルティを受けないようにしていくのも重要なファクターであるといえるだろう。

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