TOTAL PARIS-DAKAR-CAIRO 2000/総集編

ラリーのすべての日程を終了
車両の送りだしも済ませ、クルーは一路帰国の途に

 
ゴールしたチームスガワラのクルーとスペースレンジャーFT
ギザのピラミッド前にゴールしたチームスガワラのクルーとスペースレンジャーFT
「音と光のショー」
「音と光のショー」
優勝トロフィーを受け取ったクルーとオーガナイザーのユベール・オリオール
金色のピラミッドをかたどったクラス優勝トロフィーを受け取ったクルーとオーガナイザーのユベール・オリオール
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 23日、ギザのピラミッド前で仮表彰を済ませた競技車は近傍のメナハウスホテルの駐車場にパルクフェルメされ、16時には最終的な競技結果を発表。これをもとに19時からスフィンクス前の広場で表彰式が開催された。この広場は、ピラミッドとスフィンクスを様々なライティングで演出し、その起源と歴史を立体音響で説明する「音と光のショー」を定期的に上演しており、表彰式もこのショー(英語版)に続いて実施。ライトアップされた古代のモニュメントを背景にしての表彰式はいつものダカールのホテルリゾートとは全く違う雰囲気で、出席したエントラントたちは遠くパリからダカールを経て異文化の土地にたどり着いたことを改めて実感した様子だった。
 各部門の表彰発表の中でカミオン部門ではまず最初にT4−1クラスの表彰が行われ、壇上に上がった菅原義正/鈴木誠一/菅原照仁のクルーは金色のピラミッドをかたどったクラス優勝トロフィーを受け取りオーガナイザー、ユベール・オリオールとがっちり握手。会場の拍手に応える表情には、ラリーの長い緊張とストレスからの解放感も感じ取れた。翌24日には車内整理の後、北方約250キロにあるアレクサンドリア港に向かい帰路の船積みに。12月27日の公式車検からほとんど1ヶ月に及ぶ長いラリーはこれですべての日程を終了した。
 ダカールからカイロまでという全くの新ルートを採った今年のラリーは中盤のニジェールでテロ回避のために全車両を空輸するという事態に見舞われ、実に4行程に及ぶパリ・ダカ史上初の大幅中断に。その後昨年10月の国際制裁解除を受けて8年ぶりに通過が実現したリビア〜エジプトのコースが高速かつ難易度の低い設定の連続だったこともあり、19日ワハ〜コフラ間で発生した4輪トップ勢4台の大ジャンプ事故を除けば各カテゴリーとも大きな波乱はなく、比較的小さいタイム差(時間差が小さくてもスタックやミスコースといった逆転要素が少ないので逆転しにくい)のままカイロに到着する格好となった。
 カミオン部門ではカマズを定年退職したモスコフスキーに代わってチャギュインとカビロフの若手同士が序盤からトップを競り合う展開となり、これをワークスタトラのロプライス、元タトラのトムチェックがブラジルのアゼヴェドと組んで走らせる通称ブラジルタトラ、そしてミッドシップエンジンのタトラ/カマズに対して一般的なフロントエンジン搭載方式を採るT4−1クラスのスペースレンジャーFTが追うという格好となった。全体的に堅い路面と直線の多いコースはいきおい各カテゴリーともパワーと最高速の勝負となり、なかでも850馬力を発生するYMZ製26リットルV8ツインターボエンジンを積むカマズの有利に。エンジンは公称600馬力と非力?だが、4輪独立懸架エアサスペンションの優れたシャシーとカミオン部門総合優勝歴6回の老練なロプライスのドライブでカマズを凌駕してきたワークスタトラも、今回のあまりな超高速コースにはポテンシャルを活かせないという構図だ。
 一方、チームスガワラのスペースレンジャーFTも本来の小型軽量な中型クラスの持ち味でツイスティなコースや難易度の高い砂丘を得意としてきたのだが、今回はそういったコース設定が少なく、その持ち味を充分に発揮することはできなかった。しかし、フロントサスペンションの改良などにより車両の性能が一段と上がり、最終的な総合成績は総合5位とT4−1クラスの優勝。同クラスでは二番手のメルセデスユニモグに4時間余りの差をつける大勝で、中型クラスのレンジャーは大型のフロントエンジンクラスのライバルに後塵を浴びせると共に、重心位置の最適化や大型エンジンの搭載が可能になるなど、基本性能で高いアドバンテージを得られるミッドシップエンジン搭載のライバルにも伍した走りを見せつけた。相手はスペアパーツを満載したサポートカーとはいえ、往時はかなわなかったタトラ(スクレノフスキーのワークスタトラ2号車)と中盤以降総合5位争いを見せ、一時は1分差まで詰め寄られるも終盤で突き放して見せたあたりは、車両とチームの総合力が向上したことを如実に示すものと言えよう。チームスガワラとスペースレンジャーFTにとって、今回のラリーはカミオントップクラスの実力を確認する機会となったのである。

■チームクルーのコメント
菅原義正 ドライバー・菅原義正
 テロによる中断や篠塚さんの事故など、ハプニングも多い大会でしたが、無事カイロにゴールすることが出来ました。この成績は積極的に攻めて得たもので、自分としても満足しています。実は最終日はエンジンを吹かすとターボから異音が出て、ピラミッドにつくまでひやひやしてたんですよ。もちろん、初めてメインのナビゲーターをほとんどミス無く務めてくれた照仁と、メカニック・ナビ兼任で昼夜とも頑張ってくれた鈴木誠一、日野自動車様のご好意によりエアメカニックとして派遣していただいた経験豊富でフランス語の堪能な矢口義光さんというチーム全員の力が上手くまとまった結果です。そして参戦を実現させてくださったすべてのスポンサーの方々、応援してくださったすべての皆さまにお礼を申し上げたいと思います。とくに期間中頂いた応援メッセージ(電子メール)は疲れてビバークに到着した我々にとってなによりの栄養剤で、大変力付けられました。みなさん、どうもありがとうございました。
鈴木誠一 ナビゲーター・鈴木誠一
 まあ、前半立ち木によるボディへのダメージが大きかったのには閉口しました。ドアは曲がるし、ウインドゥはフロントのひびが毎日増えていくし、運転席サイドまで枝に押されて割れてしまうし…。でも半面、シャーシや駆動系には一切トラブルは発生せず、レンジャーの頑丈さを改めて感じました。エジプトは自分にとっても以前ファラオラリーで来たことがあって懐かしく、きれいな景色と厳しい路面を堪能?出来ました。
菅原照仁 ナビゲーター・菅原照仁
 初めてメインのナビゲーターを担当するということで、先輩である松本尚子さんに色々教わったり自分なりに色々工夫したりして準備していたのですが、今年のコースは思っていたより難しくなかったというのが正直なところです。また、昨年に比べて乗り心地が格段に良くなり、スピードを落さずにすむ分、クルマは速くなっていることがナビ席に乗っていてもよく分かりました。途中の4行程中断がありましたから仕方ありませんが、競技としては少々物足りなさも感じているところ。でも、無事にゴールして総合5位をとることが出来たのはとても嬉しいです。
矢口義光 エアメカニック・矢口義光
 T4−1クラス優勝と総合5位が取れて本当に良かった。自分はかつて協力隊員で駐在していたニジェールから東のアフリカは来たことが無かったので、後半は毎日が新鮮ということもありました。リビアの寒さは応えましたが…。最近カミオン部門は4輪との分化でスタート時間が遅く、いきおい到着時間も遅くなるので夜間走行の機会も増え、菅原さんたちも大変だったと思います。

■カミオン部門総合順位
順位 車番 部門 ドライバー 車種 総合タイム
1 409 T4-3 V.チャギュイン カマズ 58h 21' 42"
2 407 T4-3 K.ロプライス タトラ 58h 37' 52"
3 416 T4-3 F.カビロフ カマズ 59h 45' 18"
4 408 T4-3 A.D.アゼヴェド タトラ 59h 45' 23"
5 400 T4-1 菅原 義正 日野スペースレンジャーFT 63h 01' 44"
6 414 T4-3 B.スクレノフスキー タトラ 63h 35' 14"
7 404 T4-1 K.バウエール メルセデス 68h 00' 26"
8 418 T4-1 J.P.ボゾネ メルセデス 71h 05' 47"
9 421 T4-1 R.ジンブル メルセデス 71h 51' 35"
10 415 T4-1 J.P.ライフ マン 73h 55' 32"
 ※ カミオン部門(T4)のクラス分け
T4−1: フロントエンジン(標準)搭載の4輪駆動車
T4−2: フロントエンジン(標準)搭載の6又は8輪駆動車
T4−3: ミッドシップエンジン搭載車