もうひとつのパリダカ編
写真  ご存じの通りパリダカとは約20日間に渡り、総走行距離約1万kmに及ぶ壮大なスケールとハイレベルを誇るクロスカントリー・ラリーレイドである。
 そんな過酷さ故にマシントラブルやダメージはつきもの。当然スペアーパーツ、タイヤ等が必要になるのだが、それらすべてを競技車両に積んで走るには問題が多すぎる。例えば四輪の場合なら、レギュレーションで決められている800kmの航続距離の条件を満たすため、ドラム缶約2ヶ分の燃料のためのスペースを要し、さらにスペアータイヤを最低2本積むのだから、それだけで容量的に限界が見える。その上、さらに荷物を積むということは重量的にも不利になる。ましてや二輪においては走ること以上の荷物を積むことは不可能である。
 そこで大多数のプライベーターは、主催者もしくはヨーロッパのアシスタンス専門チームのカミオン(トラック)に、有料で自分たちの荷物を運んでもらっている。
写真  私達チームスガワラも、長年両者を利用し運んでもらっていた。しかし回数を重ねる毎に言葉の問題、習慣のズレ、料金的な面で少なからず障害が出てきてしまうことは仕方のないことだった。
 そこで私達は昨年からアシスタンス用の2台の車両を用意し、日本人による日本人プライベーターのためのアシスタンスサービスとして、活動を始めることになった。
メンバー
ルート
スケジュール
眠気
驚き
写真  「アシスタンス」とはスペアーパーツやメカニックを乗せ、次のキャンプ地までアシスタンスルートを通って移動し、選手のサポートを役割とする部門である。
 以前メカニックは「エアメカ」と呼ばれ、名前の通りメカニック専用飛行機でキャンプ地間の移動が可能であった。しかしレギュレーションの変更により、昨年からは完全に陸路移動を強いられることとなる。それに伴い今までスペアーパーツだけを輸送していたアシスタンス車両は、加えてメカニックも同乗することとなり、アシスタンス部門の台数は急増、今年はなんと計147台ものサポート車が活躍した。アシスタンス部門だけでも競技が成立しそうな賑わいであった。
写真  ちなみにアシスタンスといってもワークス、セミワークスチームに見られる「クイックアシスタンス」とはカテゴリーが違う。それらは競技車と同部門からエントリーし、同じ競技ルートを走行するため、もしレース中競技車にトラブルが発生しても、コース上で即座にスペアパーツを交換するなどサポートができるのである。このように競技カテゴリーの中にも、戦略上有利な役割を持つアシスタンスの車両も含まれている。

写真  アシスタンス部隊には、臨機応変な判断とすばやい行動が求められる。
 パリダカ初参加の私にとって、気分的な余裕など到底なかった。自分のことは後回し、お風呂に入っていないことなど、どうでもよくなる。そんなアシスタンス部門に、女性の姿を見かけることは最後までなかった。そしてちょとした不注意が「死」に繋がる現実に、パリダカのレベルの高さを思い知った。
 アシスタンスという役割をさせてもらったおかげで、全5チーム、総勢14名の各々の姿勢とガンバリを見せてもらった。「それぞれのパリダカ」に学び、感動するものは多かった。(近藤聡子)


写真 ちなみに、選手達をサポートしているのは私達だけでなく、フランス滞在中からも数多くの人たちが様々な形でサポートをしてくれていました。彼らがいるからこそ、選手もそしてアシスタンスのスタッフも万全の準備を整えることができ、また安心してレースに臨めたのです。
我々を支えてくれた皆様に感謝いたします。

この手記は四駆雑誌「4×4MAGAZINE 5月号(2003年3月26日発売)」に掲載されます。