
 |  11月28日(金) はれ
ゲルで寝たことは結構あった。特に去年のモンゴルではラリーのあとに、わけあってゲル生活を強いられた。でも、ストーブが効いている時のやさしい感じの暖かさ、シーツの微妙なひんやり感、独特の匂い、どれもきらいじゃなかった。昨日の夜はバイラーに誘われてゲルで寝てみようと思った。不思議なことにその空間はどれもあの時と同じだった。夜空には星が輝き、天の川もくっきり見えた。かなたから聞こえる犬の遠吠え、地の底から滲みでたような牛の鳴き声。壁に遮られた家の中では決して耳にすることはない微妙な音や匂いが感じられる世界。それがなんだか懐かしく感じた。でも僕は寒いところがきらいなんだ。夏のモンゴルでさえ寒くてふるえていたのに。だからバイラーには悪いけど、そっとゲルを出て家に戻った。バイラーの寝顔はとても幸せそうで、星空は手が届きそうなくらい近かった。(菅原照仁)
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