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ゲルの中で
11月28日(金) はれ
ゲルで寝たことは結構あった。特に去年のモンゴルではラリーのあとに、わけあってゲル生活を強いられた。でも、ストーブが効いている時のやさしい感じの暖かさ、シーツの微妙なひんやり感、独特の匂い、どれもきらいじゃなかった。昨日の夜はバイラーに誘われてゲルで寝てみようと思った。不思議なことにその空間はどれもあの時と同じだった。夜空には星が輝き、天の川もくっきり見えた。かなたから聞こえる犬の遠吠え、地の底から滲みでたような牛の鳴き声。壁に遮られた家の中では決して耳にすることはない微妙な音や匂いが感じられる世界。それがなんだか懐かしく感じた。でも僕は寒いところがきらいなんだ。夏のモンゴルでさえ寒くてふるえていたのに。だからバイラーには悪いけど、そっとゲルを出て家に戻った。バイラーの寝顔はとても幸せそうで、星空は手が届きそうなくらい近かった。(菅原照仁)


ゲル in France
11月27日(木) はれ
どーですか?この情景。フランスの草原に夕日を背にして佇むゲル。なんとも風流です。かつてハンガリーまで攻め入ったバトゥ率いるモンゴル(キプチャク・ハーン国)の軍勢も、オゴディの死さえなければいとも簡単にフランスを蹂躙していたわけで、そう考えるとこんな情景もあったのかもしれません。このハマり具合いからすると、そんなのもありだったような気もしてきますし、こちらの古い文献にゲルの挿絵なんかがあっても、それはそれで面白いものになったんでしょうね。
今回はバイラー率いるチームスガワラがテロッシェ村を席巻。「すぐ出来るよ」っていうバイラーの言葉に騙され(?)結局は半日仕事。でも天気にも恵まれたおかげで、すばらしい出来栄えのゲルが建ちました。一番はしゃいでいるのは、やはり当の本人。お風呂上がりに「じゃあモンゴルに帰りますか」と言ってゲルに行ってしまうのでした。(菅原照仁)


ゲルのもと
11月26日(水) 雨
本日未明、モンゴル人ドライバー・バイラーがベルリンより元気に到着。しかもゲル(モンゴル式住居)を携えて。というのも今年はこちらのガレージは大盛況で、レース前にはなんと総勢40名近くに膨れあがる予定。M社もN社もなんのその、驚くほどの一大チームなのですよ。基本的にはホテルを利用してもらうのですが、なるべく節約したいという方のためにゲルを用意。冬はマイナス50度にも達するモンゴルで彼らが今も昔も愛用しているゲルにはストーブも完備され、フランスの寒空ぐらいではビクともしないのです。フランスの片田舎の草むらに突如現れるゲルに、フランス人もびっくりすることでしょう。ちなみに誤解を招かないようにご説明。今年からレース部門とアシスタンス部門を明確に分けたので、チームスガワラは日野レンジャーと日野から派遣されるメカニック3名の構成で総勢6名。アシスタンス部門はJAPAN RACING MANAGEMENTとして日野の大型カミオンと四輪2台が担当します。このアシスタンスが大盛況。チームスガワラはもちろんのこと、日本人6台のバイクに四輪1台。さらにスウェーデン人にデンマーク人、スロベニア人ライダーと国際色豊か。彼らの活躍からも目が離せません。(菅原照仁)


レンジャー到着
11月25日(火) くもり
実はその姿に出逢うのは初めてだった。
8月の連休前から1日の休みもなく進められたラリー仕様への改造は、時間の経過とともにに慌ただしさを増し、それがピークに向かおうとしていた9月4日、僕はファラオラリー出場のためフランスへと旅だった。後ろ髪を引かれる思いで。それはリアボディが載せられる前のことだった。そして僕がエジプトの大地でレンジャーと共に戦っていたころ、日本では連日15時間以上の作業で最終仕上げに入っていた。「勝ちたい」という意欲がそれを可能にしていた。僕が優勝という手みやげを持って帰国したとき、レンジャーはフランスへ向かう船の中でしばしの休息をとっていたのだ。
シルバーのベースにブルーラインが彩られ、スポンサー各社のステッカーで飾られたレンジャーは今日、圧倒的な存在感を見せつけてフランスへ降りたった。「実物は細部にわたり美しい。」ブルーシートがはずされたレンジャーの第一印象だ。そしてハンドルを握ったとき、その感動に驚きが加わった。ペダルを軽く踏み込んだ途端、J08エンジンは心地よい回転音とともに軽やかに吹け上がる。吹け上がりの瞬間はまるで250ccクラスのバイクのような爽やかさだ。しかしその爽やかな風が一瞬吹き抜けた直後、地の底から湧きでるようなトルクの嵐が吹き荒れる。軽やかさと力強さ。この相反する二つの美点がレンジャーを頂点へといざなうだろう。至極のレンジャーフランスに上陸。(菅原照仁)

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